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レイヤのブレンドモードについて

  

ブレンドモードで下位のレイヤとの合成方法を指定する

前の記事ではレイヤの使い方について説明しましたが、ブレンドモードについては簡単にしか触れていません。 この記事ではブレンドモードについて詳しく解説します。

すでに説明したように、レイヤのブレンドモードとは下位のレイヤとの合成方法を指定するものです。 Inkscape特有の機能ではなく、本格的なペイント系ソフトウェアやドロー系ソフトウェアであれば必ずと言っていいほど搭載されている機能です。

Inkscapeでは、ブレンドモードには16種類が用意されています。 それぞれについて、もう少し詳しく説明します。

なお、サンプルとして以下の画像を使用します。 上層のレイヤが花の画像で、下層のレイヤがクマの画像です。

 

上層のレイヤのブレンドモードに16種類ぞれぞれを設定した場合の例を以下に掲載します。 なお、下層のレイヤのブレンドモードは標準から変えません

標準モード

上層レイヤが下層レイヤを覆い隠すブレンドモードです。 レイヤの初期のブレンドモードであり、特に難しいことはありません。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
標準モードでは、上層レイヤが下層レイヤを覆い隠します。

乗算モード

上層レイヤの色と下層レイヤの色を乗算して255で割るブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤがそのまま透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
乗算モードでは、特定の範囲だけを対象に暗くすることができます。 暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置し乗算モードで合成します。

スクリーンモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
スクリーンモードでは、特定の範囲だけを対象に明るくすることができます。 明るくしたい部分を明るく塗ったレイヤを上位に配置しスクリーンモードで合成します。

比較(暗)モード

上層レイヤと下層レイヤのピクセルを比較し、暗い方のピクセルを採用するブレンドモードです。 上層レイヤと下層レイヤから暗い部分を寄せ集めた結果になります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
比較(暗)モードでは、暗い部分だけを集めることができます。 夜間に撮影した写真から暗い部分だけを合成するのに便利です。
  
例えば、夜間の都会の道路で車やバイクが全く写っていない写真を見たことがないでしょうか。 そのような写真は、三脚で固定して撮影された複数枚の写真を比較(暗)モードで合成したものです。 交通規制して撮影したわけでも、運良く車やバイクが通っていなかったわけでもなく、比較(暗)モードで合成してヘッドライトやテールランプの光跡を消しているのです。

比較(明)モード

上層レイヤと下層レイヤのピクセルを比較し、明るい方のピクセルを採用するブレンドモードです。 上層レイヤと下層レイヤから明るい部分を寄せ集めた結果になります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
比較(明)モードでは、明い部分だけを集めることができます。 夜間に撮影した写真から明るい部分だけを合成するのに役立ちます。
  
例えば、道路を行き交う車のヘッドライトやテールランプの光跡、森を埋め尽くすようなホタルの光、流れるような夜空の星などです。 誰でも一度は見たことのあるそれらの写真は、三脚で固定して撮影された複数枚の写真を比較(明)モードで合成したものです。

オーバーレイモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

  
このブレンドモードでは、下層レイヤの色によって乗算またはスクリーンと同じ計算が行われます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
オーバーレイモードでは、特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くすることができます。 明るくしたい部分を明るく、暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置してオーバーレイモードで合成します。

覆い焼きカラーモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るさとコントラストを強調されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤがそのまま透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
覆い焼きカラーモードでは、特定の範囲だけを対象に明るさとコントラストを強調することができます。 明るさとコントラストを強調したい部分を明るく塗ったレイヤを上位に配置し覆い焼きカラーモードで合成します。
  
本来、覆い焼きというのは、銀塩写真のプリント作業で使われる手法のことで、露出不足で黒つぶれした部分を明るくすることを指します。 印画紙の一部を覆うことで露光を減らし、結果その部分を明るく仕上げます。

焼き込みモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤがそのまま透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗さとコントラストを強調されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
焼き込みモードでは、特定の範囲だけを対象に暗さとコントラストを強調することができます。 暗さとコントラストを強調したい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置し焼き込みモードで合成します。
  
本来、焼き込みというのは、銀塩写真のプリント作業で使われる手法のことで、露出過多で白飛びした部分を暗くすることを指します。 印画紙の一部の露光を増やし、その部分を暗く仕上げます。

ハードライトモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

  
このブレンドモードでは、上層レイヤの色によって乗算またはスクリーンと同じ計算が行われます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
ハードライトモードでは、特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くすることができます。 明るくしたい部分を明るく、暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置しハードライトモードで合成します。

ソフトライトモード

上層レイヤの色に応じて下層レイヤの色を調整して透過させるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが明るく調整されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤが暗く調整されて透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
見てわかる通り、標準モードと同じ結果になっています。 これは、Inkscapeの不具合によるものだと思われます。
  
本来、ソフトライトモードでは、特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くすることができます。 明るくしたい部分を明るく、暗くしたい部分を暗く塗ったレイヤを上位に配置してソフトライトモードで合成します。

差分モード

上層レイヤの色と下層レイヤの色の差分を求めるブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが階調反転されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤがそのまま透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
差分モードでは、上層レイヤと下層レイヤの差分を求めることができます。 例えば、修正前の写真と修正後の写真を重ねて差分モードで合成することで、修正された部分のみを表示させることができます。
  
差分モードでは、特定の範囲だけを対象に階調反転することもできます。 階調反転したい部分を明るく塗ったレイヤを上位に配置し差分モードで合成します。

排他モード

上層レイヤの色から下層レイヤの色を除外するブレンドモードです。 上層レイヤの明るい部分は下層レイヤが階調反転されて透過され、上層レイヤの暗い部分は下層レイヤがそのまま透過されます。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
排他モードでは、差分モードと似た結果が得られます。 ただし、コントラストは弱くなります。

色相モード

上層レイヤの色相と下層レイヤの彩度・輝度を合成するブレンドモードです。 上層レイヤの彩度が0の場合は下層レイヤの色相が使われます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤを着色することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
色相モードでは、上層レイヤの色相と下層レイヤの彩度・輝度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤを着色することができます。

彩度モード

上層レイヤの彩度と下層レイヤの色相・輝度を合成するブレンドモードです。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの鮮やかさを調整することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
彩度モードでは、上層レイヤの彩度と下層レイヤの色相・輝度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの鮮やかさを調整することができます。

色モード

上層レイヤの色相・彩度と下層レイヤの輝度を合成するブレンドモードです。 上層レイヤで下層レイヤを着色することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
色モードでは、上層レイヤの色相・彩度と下層レイヤの輝度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤを着色することができます。

輝度モード

上層レイヤの輝度と下層レイヤの色相・彩度を合成するブレンドモードです。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの明るさ調整することになります。

このブレンドモードでの合成結果は以下のようになります。

 
  
輝度モードでは、上層レイヤの輝度と下層レイヤの色相・彩度を合成することができます。 つまり、上層レイヤで下層レイヤの明るさを調整することができます。
  
  

まとめ

それぞれのレイヤにはブレンドモードを設定することができます。 ブレンドモードは下位のレイヤとの合成方法で、以下のものが用意されています。

モード 効果
標準 上層レイヤが下層レイヤを覆い隠す
乗算 特定の範囲だけを対象に暗くする
スクリーン 特定の範囲だけを対象に明るくする
比較(暗) 暗い部分だけを集める
比較(明) 明い部分だけを集める
オーバーレイ 特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くする
覆い焼きカラー 特定の範囲だけを対象に明るさとコントラストを強調する
焼き込み 特定の範囲だけを対象に暗さとコントラストを強調する
ハードライト 特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くする
ソフトライト 特定の範囲だけを対象に明るく、または暗くする
差分 上層レイヤと下層レイヤの差分を求める
排他 上層レイヤから下層レイヤを除外する
色相 上層レイヤの色相と下層レイヤの彩度・輝度を合成する
彩度 上層レイヤの彩度と下層レイヤの色相・輝度を合成する
上層レイヤの色相・彩度と下層レイヤの輝度を合成する
輝度 上層レイヤの輝度と下層レイヤの色相・彩度を合成する
 
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